私は精神科病院に転職する時「正直どうなんだろう?」と考えていました。
ネットで調べると「身体ケアがなくて楽」と書いてあったり、「きつい」「暴れる患者にケガをさせられることもある」と書いていたりして、凄い不安を抱えて転職しました。
転職して感じたのは「ネットで言われているほど楽ではないがそこまでしんどくもない」ということでした。
この記事では精神科看護師がきついと言われる理由と逆に楽だと言われる部分について、現役精神科看護師が正直に解説していきます。
結論:一般病棟とは違うしんどさがあるが、体力的には楽

私は集中治療室、手術室、カテーテル室、救急外来と色々な部署を浅く経験しただけで、一般病棟は経験していないので病棟との比較はできません。
ですが、私が経験した中では精神科が一番体の負担がないです。
オムツ替えて、検査出して、食介して、記録して…という流れは普通の病棟と変わらない(と思う)ですけど楽です。
ただしんどい場面はあります。普通に忙しくて、1日あっという間に終わってしまう日もあります。学生時代の実習のような「話を傾聴して、一緒に遊んで…」というだけではないです。
私は今までの部署よりは楽に感じてますが、人によってはきついと感じて退職してしまう人もいるので、「精神科は楽」というよりは「人によって向き不向きが激しい」と思います。
精神科看護師がキツイと言われる理由

次に精神科がキツイと言われている理由を現場の内容を踏まえて解説していきます。
理由①:不穏な患者の対応
精神科病棟はうつ病で気分が落ち込んでいる人もいますが、統合失調症や躁うつ病で不安になる人も多いです。
暴言や罵声は当たり前です。人間とは思えないような奇声を上げる患者も多いです。何故か分からないんですけど反社も多いので、入れ墨塗れの怒鳴り散らしてくる患者とかもいます。
まだ奇声を上げたり暴言ならいいんですけど、暴力を振るってくる患者も当たり前にいます。
タックルされて腰やられた先輩もいましたし、後ろから頭殴られた先輩もいましたし、会話中いきなり殴られた先輩もいました。
ただ基本的には不穏な患者は複数人で対応するのが基本なので、怪我したりすることはそうそうないですね。
ただ何をしてくるか分からないので、逃げ道を常に用意して絶対に患者に背中を向けない様に立ち回る必要があります。
理由②:入院期間が長い
大体一般病棟の入院患者って2-3週間程度で退院される事が多いじゃないですか。だからちょっと面倒な患者が入院してきても、2-3週間の我慢じゃないですか。
精神科って1ヶ月以上の入院が当たり前で、人によっては1年以上入院している患者もいます。なので、対応に困るような面倒な患者と1年以上関わるケースもあります。
落ち着いている患者とかならいいと思うんですけど、症状が寛解して落ち着いている人は1年も入院しないので、長期入院している人は大体訳アリな患者ばかりです。
例えば統合失調症の症状がひどくてずっと妄想的で不穏になる人や、暴力性の高い認知症患者などとにかく手がかかる患者などがいたりします。
認知症患者は不穏なだけではなく、弄便したり水を床にまき散らしたりと厄介な事ばかりするので、そういう患者が長期間入院しているのはキツイですね。
理由③:急変はほとんどないが、別の意味で緊張する
状態悪い患者とかいると急変リスク高くて、ちょっと緊張するじゃないですか。
精神科の患者も高齢化が進んできているので、急変して亡くなったりする事も勿論あるんですけど、また別の意味で緊張があります。
先ほどもちょっと書きましたが、精神科の患者って何をするか分からないので警戒が必要なんです。
うつ病で入院している患者なんかは突然トイレットペーパーを丸飲みしようとしたり、洋服で輪を作って首を吊ろうとしている時もあります。こちらの声掛け一つで希死念慮が強まって死のうする時もありますし、何の前兆もなく死のうとしたりする時もあります。なので声かけ一つ一つに気を遣う必要があったりします。
統合失調症で不穏な患者は妄想がひどくて、いきなり掴みかかってきたり、怒鳴り散らしきたりもします。
なので自分の身も守らなきゃいけないし、患者も守らなきゃいけないんですよね。そういった面で常に緊張しているというのはあるかもしれません。
逆に楽だと感じる理由

今度は私目線で逆に楽だと感じる理由について解説します。
理由①:身体的処置が少ない
精神科って看護技術をあまり活用しないから腕が鈍るなんて言われたりしますよね。
ですがそれは半分正解で半分間違いです。
私の勤めている病院は精神科単科ですが採血や点滴は普通にありますし、経管栄養や褥瘡の処置も当たり前にやります。
ですが一般病棟に比べたら少ないです。採血やルート確保は1週間に2-3回程度ですし、経管栄養なんかは2ヶ月に1回あるかないかぐらいです。
またオムツ交換や清拭・入浴介助は毎日やってはいますが、入院患者は半分ぐらいは自立している人で一般病棟程要介助者が多くないので負担は少ないです。
なので、一般病棟に比べたらケアや処置が少ないので体力的には楽だと感じてます。
理由②:空いている時間が多い
一般病棟の様にベッドの回転率が高い訳ではないので、そこまで入退院が多くないんですよね。(保護室などはちょっと違いますけど…)
なので結構業務がルーティン化しやすく、一般病棟と比べて空いている時間が多いです。
午前中バイタル取って検査出したら午後は割と手が空いたりします。その時間に委員会の仕事を進めたり、患者と話したりする余裕があります。
一般病棟なんかだと一日中忙しい事が多いとは思いますが、精神科病棟ではあんまりないですね。0ではないですけど、結構稀です。
なので「患者とゆっくり関わりたい」「余裕を持って働きたい」という人にとってはピッタリだと思います。
理由③:残業が少ない
精神科は緊急入院なんかが定時ギリギリとかに滑り込んでこない限り残業するケースはほぼないです。
急に不穏になって拘束したりするのに手間取ったりすることはありますが、理由②でも書いた通り空いている時間が多いんです。
なので「定時ギリギリだけど処置や検査出しが終わってやっと記録ができる…」みたいな事はありません。午後はゆっくり記録書いています。
そういった点から残業は発生しにくいですね。身体的処置も少ないので、仮に処置が残ってしまっても夜勤でササッとできるぐらいしか残らないので、夜勤の負担も少ないです。
ワークライフバランスを重視する人からしたらいい環境かなとは思います。
実際に働いて感じた本音

ここからは私が働いていて実際に感じた本音をお伝えしていきます。
看護師として働いている気がしない
精神科って患者の安全を守る為に荷物の持ち込みを制限しています。首を吊らない為に紐やベルトを回収したり、自傷行為しないようにカミソリやガラス類なんかも回収します。
入院時はこういった物の持ち込みがないか荷物を全て確認して、ボディーチェックもします。
更に隔離病棟であれば安全の為に患者を鍵掛けて閉じ込めたり、拘束したりします。
これやってる事刑務所に近いんですよね。なので看護師として働いているというより看守やってる気分なんですよ。
それで身体的処置やケアも少ないじゃないですか。基本的に薬を与薬したり、患者の話を聞いて聞いていることがほとんどなので「これって看護師じゃなくても出来る仕事だな…」と感じてしまいます。
「患者を看護する」じゃなくて「患者を管理する」って感じがしますね。
もちろんすごい不穏だった人がまともになって退院したりするのを見るとやりがいとかはあるんですけど、隔離病棟にいると「うーん…私は看護師なのか看守なのか…」と考える時がありますね。
なので自分の知り合いとかに「看護師やってます!」とは言えなくなってきましたね。
カルテが面白い
一般病院って現病歴とか疾患ごとで大体近しい内容になるじゃないですか。消化器であれば消化器症状が出て、血便が出て…とか。
精神科に入院する人って奇行で通報されて入院するパターンがあったりするんで、カルテの内容が滅茶苦茶面白いんですよね。
統合失調症で症状の幻聴や妄想に左右されて川に飛び込んだり、全裸で逮捕されていたりします。一般科でそんなの見ないですよね。本人の意思ではないのは分かってるんですけど「とんでもない奇行だな…」とちょっと笑っちゃう時もあります。
うつ病の人は結構しんどい人生送られてる方が多くて「そりゃうつ病になるよ…」とちょっと同情しちゃう事が多いですね。家庭環境が複雑だったり、職場の環境がひどかったりする人が多いですね…
なので精神科のカルテって「今までどんな人生を歩んできたのか」というのが知れるので、色々な人の人生ドラマを知れて面白いんですよね。
一般科に戻れる気がしない
入院患者の高齢化が進んできて肺炎を併発している人とかいるんで身体管理とかもやって看護師っぽいこともたまにはやっています。やっていますが、どうしても少ないので看護技術や知識に不安が出てきます。
薬も精神薬とか眠剤ぐらいしか扱わないので、薬の知識もだいぶ無くなってしまいましたし、急変対応なんかもちょっとやってなさ過ぎて、正直自信ないです。
そういった所からちょっと今後精神科以外で働けるビジョンが見えないですね。
残業も少ないし身体的にも楽なんで、給料も休みも変わらないならあえて一般科に戻る理由もないなとは思いますけどね。
意識の高い看護師さんなら違うのかもしれませんが、私はあくまでも仕事として看護師をやっているわけであって、そんなに意識高くないので…
患者を怖いと思うようになった
精神科って今まで普通だった患者がいきなり不穏になって暴れたり、いきなり自傷行為したりするんですよね。
昨日まで普通に話せてたのにいきなり怒鳴り散らしてきたり、ニコニコ話した後にいきなり手首切ったりするんですよね。
なので患者の言う事を全く信じれなくなりました。
常に「背を向けたら後ろから何をされるか分からない」「何を使って自傷行為するか分からない」という気持ちで患者と接しています。
一般科であまり考えないと思うんですけど、患者と関わる時はまず逃げ道の確保から始まるんですよね。個室に入院している患者の部屋に入る時は必ずドアの近くにいます。決して患者に背を向けてはいけません。
また信じられない自傷行為をするんですよね。刃物は持ち込めない様にしてるんですけど、シャーペンを刺したり、お風呂のタイルを剥がして研いで切ったりします。爪切りを盗んで自傷していた人もいたらしいです。
だからボディーチェック・荷物チェックは気が抜けません。自傷行為ならまだしも、こちらに刃を向けてくる時もありますから…
精神科に向いている人・向いていない人

精神科看護は、一般病棟とは求められるスキルや適性がかなり違います。体力的な負担は比較的少ない一方で、患者さんとのコミュニケーションや精神的な余裕がとても重要になります。
そのため、
- 人の話をじっくり聞くのが苦じゃない人
- 感情的にならず、落ち着いて対応できる人
こういった人は、精神科に向いている可能性が高いです。一方で、
- 目に見える処置や技術をバリバリやりたい人
- 患者の言動に強く影響されやすい人
こういったタイプの人は、精神科の働き方にギャップを感じることもあります。ただし、実際には向き・不向きはもっと細かいポイントがあります。ちょっとざっくりすぎるので精神科で働いて感じたリアルな視点を踏まえて別記事で詳しく解説します。
まとめ
いかがだったでしょうか?
精神科は私にとっては楽な科ではありますが、人によっては全く合わずに、退屈や恐怖を感じたりします。
精神科は「体力的には比較的落ち着いている場面もある一方で、精神的な負担を感じることがある仕事」です。そのため、精神科が「きつい」と感じるかどうかは、その人の性格や価値観によって大きく変わります。
次の記事では、「精神科看護師に向いている人・向いていない人」について、実際の経験をもとに詳しく解説します。
精神科で働くか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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